就学前教育熱の考察その①―言語という視点から―

いま、国会では現行の小学校5年生からの英語授業の開始を小学校3年生からの開始という方向で議論がなされているようです。
また、幼児教育、保育の分野でも欧米の一部の国に習って「1歳前倒し」で、小学校に接続して5歳から義務教育をはじめるべきという議論もあるそうですが、私達の現場からの率直な感想は確かに身体つきは大きく早く成長したように思います。

しかし当たり前ですが人の成長はそれだけではない訳です。情緒や自我などを含め、人としての土台、生きる力の基礎というような観点からみるとむしろ成長は昔より遅れていて「1歳後ろ倒し」したほうが良いのではないかと思えるような状態でもあります。それはキャンプなどのお泊り保育をした時、課題と課題の切り替えの時、人との関係での心のおりあいのつけかた、それらストレスへの耐性度などに表れているのです。
しかし、その問題はまた別の回に譲ります。

さて、もちろん英語とは一つの言語ですが、その「言語の修得と乳児期との関係」について「Mind、Brain、Education 誌 第5号 September 2011」のパトリシアキュール氏の乳児脳、バイリンガル脳に関する論文をNHKの「すくすく子育て」の解説者としても名高い 榊原洋一医学博士は非常に優れた論文であると称えています。


その内容は、乳児期の語音学習能力が後の言語発達にどのように影響するかというものですが、結論は生まれて早くから語音聞き取り能力が高かった子どもは、その後の成長後も話し言葉の表現力、理解力も高かったというものです。ただし、だからと言って乳児期から多種多様な言語、バイリンガルにするべくいろんな言葉を雪崩のように伝えるのは誤りのようです。実際に榊原先生のクリニックにはたくさんのバイリンガルの子ども達が言葉の遅れを理由に相談に訪れるとのことです。

それは氏のこのような見解からも明確です。「言葉を身につけ始めたころは、子どもの脳の中に蓄えられる語彙には制限があります。たとえば、脳内に蓄えられた語彙数が100の時に例えば2ヵ国の言葉の環境のバイリンガルの子どもは、それぞれの言語の語彙が50ずつしか入りません。上記の子どもの言葉はモノリンガル(単一言語)の子どもの半分ということになります。」


しかし、続きがあり先のキュール氏の研究の乳児の持つ力の研究成果には驚くべく事実が含まれています。乳児期の赤ちゃんにはどのような言語の母音も聴きわけられる能力を生まれながらに持っており、お母さん、お父さん、周囲の大人の語りかけからその出現頻度を統計学的に計算して語音を学び、一定の回数聞くと、その語音の理解が固定すること(平均10ヵ月位)を明らかにしています。そしてその語音が固定されると、頻度の高くない語音の聞きわけ能力は急速に低下するということです。(榊原 洋一氏のブログより)


つまり、もともとたくさんの言語を聞きわける能力を生まれたばかりの赤ちゃんは持っていて必要のない情報は聞きわけないようしてその能力はなくなっていくという説をたくさんの例を取り、正しい研究結果として確認をしたというのです。 家庭内における乳児との言葉による関わり合いは極めて複雑なものでありますが、乳児の脳は外からの(言葉などの)刺激によって文字通り「形作られる」ものであること、そのために子どもにはなるべくたくさん話しかけることが、研究結果からも大切だということのようです。


そしてもう一つ研究結果からの事実は乳児期には丁寧に語りかけを、特に乳児の傍にいる時「きっと分からないだろう」と語りかけるのをためらわず、滑稽にみえても「独り言」のように生の声を10ヵ月位までにたくさん伝えてあげることが母語の固定化前には重要であるとのことです。それが後々、高い言語の表現力、高い言語の理解力につながるならばなおのことですね。


近年では、確かにバイリンガルな環境の中でお子さんを育てたいという方もおられるようですし、お子さんをバイリンガルにしたい方も多いかと思いますし、実際に「英語保育園」という看板の保育園などもありますが、当園も英語などを行っておりますが、基本は「かたよらずバランスよくいろんな教育に取り組む」ことが乳児、幼児期には大切だと考えています。








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